「ここにもハンコをくれないか？」

営業の彼が交通費請求書と一緒に出してきたのは婚姻届。何てふざけた人だと呆れたけれど、
それがシャイな彼のために営業課のみんなが考えてくれた作戦だと知ったときから彼がとても気になる存在になった。
それから二年。
同じ名前でハネムーンに行きたいねと旅行代理店のパンフレットを見ながら私が言うと、
彼が出してきたのはそのときの婚姻届だった。
肌身離さず持っていたのか、

ちょっぴりしわがよって擦り切れて、
でも、二年間ずっと彼が真剣に付き合ってくれていたことを思うとうれし涙がこぼれた。

新居で初めての夕食の後、二人でハネムーンの写真をパソコンに取り込んで見る。
まばゆい太陽、どこまでも白く輝く砂浜、

深く碧く静かな海。
モニタの青い光がふたりだけの時間を仄かに照らす。
これからずっとこんな時間が永遠に続いていくのね。

「私たち、結婚しました」